
フリーランスの収入が不安定になる原因は、仕事量の波そのものより、取引先が1〜2社に偏っている、時間で売る仕事しかない、入金が遅いという収入の構造にあります。構造の問題なので、取引先を3社以上にする、時間型の仕事に成果型・資産型を足す、本業と別の領域を副業的に持つ、という3つの軸で収入源を分ければ揺れは小さくできます。入金の遅れや一方的な減額にはフリーランス法で手当てできる部分がありますが、取引先の集中と時間型への偏りは自分で組み替えるしかありません。読み終えたときに、自分の収入がどの構造で揺れているか、今フリーランスの人と独立を考える会社員がそれぞれ何から手を付けるかを判断できる構成にしています。
この記事の目次 6項目
収入の不安定さは調査でどう表れているか
株式会社LiKGが2026年2月に発表した「フリーランス実態調査」(フリーランス200名が回答)では、働くうえでの不安として「収入の不安定さ」を挙げた人が57.5%でした。同じ調査で「AIの台頭で仕事がなくなる不安」を挙げた人は8.5%です。話題になりやすいAIよりも、来月いくら入るかが読めないことのほうが、当事者にとってはずっと身近な問題になっています。
不安が大きくなる理由は家計の側にもあります。プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の「フリーランス白書2025」では、自分の収入が世帯収入の8割以上を占める人が45.7%でした。この層は、売上が落ちた月を配偶者の収入などで埋める余地が小さく、仕事の波がそのまま家計の波になります。
同協会の「フリーランス白書2026」(調査期間2025年11月)では、社会保険制度に不安を感じる人が68.2%、安心していると答えた人は6.7%にとどまりました。病気やけがで働けない期間の収入や老後の年金は、会社員であれば勤務先を通じた制度がある程度支える部分です。フリーランスは毎月の売上の揺れに加え、働けなくなったときの揺れも自分で受け止めることになります。
収入の水準も見ておきます。ランサーズ「フリーランス実態調査 2024年」(調査期間2025年1月)では、広義のフリーランスの年間報酬は99万円以下が約7割で、収入に満足している人は32.0%でした。一方、白書2026では年収400万円以上が49.5%です。対象の取り方が違うため、この開きはそのまま矛盾を意味しません。ただ、年収が400万円を超えていても、取引先が少なければ契約が一つ終わっただけで年収は大きく動きます。不安定さは、年収の高さとは別の軸で測る問題です。
調査ごとに対象が違う点に注意
ランサーズの調査は、2024年にフリーランスとして報酬を得た20〜69歳を広く対象にしているため、低収入が多い副業系・複業系のワーカーも含まれます。LiKGの調査は回答者が200名と規模が小さく、白書もこれらとは対象の取り方が異なります。調査どうしで数字を比べるより、それぞれの調査の中で何が多いかを読むほうが、実態をつかみやすくなります。
自分に当てはめるときは、年収の額より先に、世帯収入のうち自分の収入が占める割合と、売上が止まったときに蓄えで何か月暮らせるかを確かめておきます。自分の収入への依存が大きく、蓄えで持つ月数が短い人ほど、次に見る構造の見直しを先に進める理由がはっきりします。
収入が揺れる3つの構造
収入が不安定なフリーランスの話を分解すると、原因はだいたい次の3つのどれか、または組み合わせです。自分がどれに当てはまるかで、打ち手が変わります。
取引先が1〜2社に集中している
LiKGの調査では、案件を紹介経由で獲得している人が58.5%でした。紹介は条件が通りやすく継続もしやすい反面、紹介元が前職の同僚や特定の会社に偏りがちです。取引先が1社か2社しかない状態では、相手の予算削減、担当者の交代、業務の内製化のどれか一つで、翌月の売上がまとめて消えます。本人の仕事ぶりと関係なく収入が途切れる点が、この構造のいちばんの弱点です。
時間で売る仕事しかない
白書2026では、月の稼働が140時間以上、つまりフルタイム相当の人が48.5%でした。稼働時間に報酬が比例する仕事だけを受けている場合、売上は単価と時間の掛け算で決まります。すでに時間が上限に近い人にとって、残る手段は単価を上げることだけです。
ところが単価は動きにくくなっています。本業でIT案件を受けるフリーランス255名を対象にした株式会社Hajimariの調査(2026年6月)では、直近1年の月額単価が横ばいだった人が86.7%で、単価を上げる打ち手が「わからない」と答えた人が31.0%いました。時間型だけの収入は、体調を崩して稼働できない月にそのまま売上が落ちるという弱さも抱えています。効率化しても単価が動かない理由は、フリーランスの単価が上がらない理由で別に取り上げました。
支払サイトが長く、入金が後ろにずれる
売上は立っているのに口座にお金がない、という状態です。締め日と支払日の組み方によっては、納品してから入金まで長く待つことになります。新しい取引先を増やした直後は入金待ちの期間が重なるため、仕事が増えているのに手元資金が細るという逆転も起こります。
| 構造 | 起きること | 自分で確認する方法 |
|---|---|---|
| 取引先の集中 | 1社の契約終了で、その月から売上が欠ける | 直近の売上を取引先別に並べ、上位1社が占める割合を見る |
| 時間型の仕事だけ | 稼働時間が上限に近づくと売上が頭打ちになり、休むと減る | 売上を稼働時間で割り、時間あたりの報酬の推移を見る |
| 支払サイトが長い | 売上と入金の時期がずれ、手元資金が足りなくなる | 契約ごとに納品日と入金日を並べ、待っている日数を数える |
表の右列で確かめた結果、偏りがいちばん大きかった構造から手を付けます。取引先の集中と時間型への偏りには自分の側の打ち手が要り、入金のずれは次に見る法律で一部を手当てできます。
法律で手当てできること、できないこと
3つの構造のうち、入金のずれと一方的な条件変更については、法律で手当てできる部分があります。
2024年11月1日に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、従業員を使用しない個人が業務委託を受けるときに、発注側へ取引条件の書面等での明示、60日以内の報酬支払い、一方的な減額や買いたたきの禁止、ハラスメント対策などを義務づけています。会社員が副業で業務委託を受ける場合も対象になり得ます。副業の立場で何が変わったかは会社員のまま業務委託で働くときにまとめています。
2026年1月1日には、旧・下請法を改正した取適法(中小受託取引適正化法)も施行されました。協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払いの禁止と支払サイト最大60日、従業員数の基準を加えた対象の拡大が柱です。フリーランス法と取適法の両方に違反する行為には、原則としてフリーランス法が優先して適用されます。
制度はそろっていますが、使われ方はまだ限られています。白書2025では、フリーランス法の認知度が98.7%だった一方、内容まで理解している人は66.8%、取引先との会話で話題になった人は約2割でした。白書2026では、施行後に違反と感じた経験がある人が28.5%で、そのうち交渉した人は27.5%です。知っていても、取引先に対して使っている人は少数という状況が読み取れます。
一方で、法律が手当てしない部分もはっきりしています。どちらの法律も、条件の明示、支払期日、一方的な減額や代金決定の禁止といった取引の条件を整えるためのもので、単価を上げることや発注を続けることを発注側に求める内容は含まれていません。取引先の集中と時間型への偏りは、法律がどれだけ整っても自分で構造を変えるほかない問題です。
受け取った発注内容で確認すること
発注を受けたら、業務の範囲、報酬額、支払期日が書面等で示されているかを確認します。支払期日が書かれていない、または支払いまでの期間が60日を超える条件になっている場合は、フリーランス法を根拠に発注側へ確認できます。交渉というより確認として尋ねるほうが、関係を崩さずに条件を整えやすくなります。
複数の収入源をつくる手順
収入源を増やすというと取引先の数だけを考えがちですが、分散には取引先、収入の型、仕事の領域という3つの軸があります。取引先の数が多くても、全社が同じ業界で、全部が時間型の仕事なら、業界の予算が縮んだ局面では同時に減ります。数より、一つが止まっても他が止まらない組み合わせになっているかを見ます。
手順1 今の売上を分解する
直近の売上を、取引先別、収入の型別(時間型・成果型・資産型)、入金日別に並べます。家計簿のような細かさは要りません。どこに偏っているかが見えれば十分です。
収入構造の点検項目
- 上位1社が売上の大半を占めていないか
- 取引先の紹介元が1人、1社に偏っていないか
- 売上がすべて稼働時間に比例する仕事になっていないか
- 取引先がすべて同じ業界に集まっていないか
- 発注条件が書面等で示され、支払いまでの期間が60日以内に収まっているか
手順2 取引先を3社以上にする
上位1社が売上の大半を占めているなら、まず取引先を3社以上にすることを目安にします。1社が止まっても残りで生活費の一部を支えられる状態をつくるためです。
新しい取引先は、既存の取引先からの紹介で探すのが近道です。紹介経由で案件を得ている人が多いのは先に見たとおりで、満足してくれている取引先に、別部署や付き合いのある会社を紹介してもらえないか頼むのが一つの方法です。紹介元が一人に偏っているなら、クラウドソーシングなどの公募型を、単価より入口の確保のために併用する判断もあります。すでに3社以上あるなら、次の課題は数ではなく、業界と紹介元の散らばり具合です。
手順3 時間型に成果型・資産型を足す
稼働時間が上限に近い人ほど、ここが効きます。同じ作業でも、時間ではなく納品物の単位で見積もれば、作業が速くなった分が自分の手元に残ります。さらに、テンプレートや教材、記事、小さなツールのように、一度つくったものが繰り返し売れる資産型の収入を少しずつ足していきます。
資産型は立ち上がりが遅く、最初の数か月はほとんど収入にならないことも珍しくありません。時間型の売上で生活費をまかないながら、空いた時間で積み上げるのが現実的な順番です。
手順4 別の領域を副業として持つ
本業の業界に起きる変化は、同じ業界の取引先すべてに同時に届きます。生成AIの普及で案件の出方が変わった職種もあります。AIを含め、2026年にフリーランスの周りで起きている変化はフリーランスは終わりなのかにまとめました。本業と顧客層が違う仕事を副業的に小さく持っておくと、本業の業界が縮んだときの受け皿になります。対面で教える仕事や地域の事業者向けの仕事のように、本業とは別の経路で仕事が来る領域が候補です。本業の取引先が一つの業界に集まっているなら、手順2で取引先を増やすより先に、この手順4を検討する価値があります。
会社員は独立前にこの構造を副業でつくっておく
LiKGの調査では、フリーランスのうち会社員経験者が74.5%で、その約半数は10年以上の企業経験を経て独立していました。多くの人は会社員から独立し、前職のつながりが最初の取引先になる場合も少なくありません。独立した時点で、取引先が1〜2社という構造から始まりやすいわけです。
会社員の給与は、すでに安定した収入源の一つです。その状態で副業を始めれば、取引先を増やす、時間型以外の収入を試す、別の領域で受注してみる、という3つの分散を、生活費の心配をせずに確かめられます。副業の収入が1社だけなら、独立の判断はまだ早いと考えられます。複数の取引先から継続案件が来る状態が何か月も続いているなら、判断材料がそろってきた段階です。辞める前の収入づくりの順番は会社を辞めずに独立の準備をする方法で段階ごとに説明しています。
確かめた結果、独立しないという結論も十分にあり得ます。会社員のまま副業で収入源を2つ3つ持つ状態は、それ自体が収入の不安定さへの備えになっています。
| 項目 | 今フリーランスの人 | 独立を考えている会社員 |
|---|---|---|
| 最初にやること | 売上を取引先別・収入の型別に分解する | 就業規則で副業の可否と条件を確認する |
| 収入源の足し方 | 紹介で取引先を増やし、成果型・資産型を少しずつ足す | 本業のスキルを使える仕事で、最初の取引先を1社つくる |
| 判断の目安 | 上位1社が止まっても、生活費の一部を残りで支えられるか | 複数の取引先から継続案件が来る状態が続いているか |
次にすること|副業で最初の収入源を足す
今フリーランスの人なら、まず手順1の分解から始め、偏りの大きい軸を一つだけ選んで手を付けます。取引先の集中が大きいなら紹介を頼むところから、時間型への偏りが大きいなら見積もりの単位を変えるところからです。
会社員なら、最初の目標は小さくて構いません。月に数万円の副業収入を、時間型以外の形も含めて組み立ててみると、取引先の数や入金のタイミングが収入の安定にどう効くかを実際の数字で確かめられます。副業の所得が年20万円を超えると確定申告が必要になるため、収入を記録する習慣も最初から付けておきます。
最初の案件をどこで探すかは、副業サービスの比較を見て、足したい収入の型に合うサービスから選びます。先に考え方を固めておきたい場合は、次の記事が役に立ちます。
- 報酬の決まり方で副業を分けて考える|時間型・成果型・資産型 … 収入の型ごとの特徴と、自分に合う型の選び方
- 会社員が副業で月5万円を目指すには|売上・費用・時間から立てる … 最初の目標額を売上と時間から逆算する方法
- 副業の確定申告のやり方|会社員の準備・スマホ申告・住民税の6ステップ … 収入が増えたときの申告と住民税の手順
この記事で参照した資料
- 株式会社LiKG「フリーランス実態調査」(2026年2月発表)
- プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2025」
- プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2026」(調査期間2025年11月)
- ランサーズ株式会社「フリーランス実態調査 2024年」(調査期間2025年1月16〜20日)
- 株式会社Hajimari 本業でIT案件を受けるフリーランス255名への調査(2026年6月)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(2024年11月1日施行)
- 中小受託取引適正化法(2026年1月1日施行)
この記事に書いた制度や調査の内容は 2026年10月1日 に発表元の資料で確認しました。制度や数値は変わることがあるため、最新の情報は発表元で確認してください。




