
WebライターやWeb制作の仕事は、全体として消えたわけではありません。海外の大手フリーランスプラットフォームの分析では、ChatGPT公開後にライティング案件の投稿が30.37%、ソフトウェア・アプリ・Web開発の案件が20.62%減った一方、残った案件は1件あたりの最大予算や求められるスキルが上がっています。減ったのは安い量産記事やテンプレートで作るサイトで、専門分野・編集・ディレクションを含む仕事は残っています。副業で始めるなら量産案件は入口にとどめ、本業の専門分野か編集・運用の側へ早めに寄せるのが現実的で、自分の仕事がどちら側にあるかは後半の判定項目で確かめられます。
この記事の目次 6項目
ライティングとWeb制作の案件はどれだけ減ったのか
Webライターがオワコンだと言われる根拠としてよく引かれるのが、Demirci・Hannane・Zhuによる論文「Who Is AI Replacing? The Impact of Generative AI on Online Freelancing Platforms」です。大手のグローバルなフリーランスプラットフォームに2021年7月から2023年7月までに投稿された求人138万件を対象に、生成AIの普及前後で職種ごとの案件数がどう変わったかを調べています。
結果は次のとおりです。ChatGPTの公開後、ライティング案件の投稿数は30.37%減、ソフトウェア・アプリ・Web開発は20.62%減、エンジニアリングは10.42%減でした。画像生成AIが広まった後には、グラフィックデザインが18.49%減、3Dモデリングが15.57%減っています。
| 職種 | 案件投稿数の変化 | 比較の起点 |
|---|---|---|
| ライティング | 30.37%減 | ChatGPT公開後 |
| ソフトウェア・アプリ・Web開発 | 20.62%減 | ChatGPT公開後 |
| エンジニアリング | 10.42%減 | ChatGPT公開後 |
| グラフィックデザイン | 18.49%減 | 画像生成AI普及後 |
| 3Dモデリング | 15.57%減 | 画像生成AI普及後 |
ライティングの減り方は、上の表に挙げた職種のなかで最も大きくなっています。ただし、この数字はグローバルなプラットフォーム1つにおける投稿件数の変化で、期間も2023年7月までです。日本のクラウドソーシングで職種別の案件数を同じように追った数字は、この記事で参照した資料には含まれていません。国内でも同じ割合で減ったとは読まないほうが安全です。
Web制作に近い領域では、Indeedの求人データを報じたBusiness Insider Japanの記事(2025年8月)も参考になります。米国で2022年10〜11月と2024年10〜11月の求人を比べたもので、モバイル開発者の求人は72%減、Java開発者は70%減でした。その一方で、ERPの導入・運用、AIアーキテクト、データセンター技術者の求人は増えています。作る作業そのものの求人が縮み、仕組みを選んで組み込む側の求人が伸びた、と読めます。今の仕事が指示どおりに作る部分だけなのか、何を作るかを決める部分まで含んでいるのかが、次の章から見ていく分かれ目です。
減ったのは安い量産記事とテンプレート制作
同じDemirciらの分析には、見落とされやすいもう一つの結果があります。自動化されやすい職務では、案件あたりの最大予算が5.71%増え、求められるスキルの複雑さが2.18%上がりました。件数は減ったが、残った案件は以前より高い予算で、より難しいことを求めているということです。
ただ、同じ職務で1件あたりの入札数も8.57%増えています。案件が減ったぶん、1つの案件に応募する人が増えた形です。要求水準が上がり、競争も激しくなっている。この二つが同時に起きている点は押さえておく必要があります。
これをライティングとWeb制作の現場に置き換えると、次のように整理できます。数字ではなく、上の結果をもとに編集部が仕分けたものです。
| 領域 | AIに置き換わりやすい仕事 | 残りやすい仕事 |
|---|---|---|
| 記事 | キーワードを渡されて構成と本文を埋めるだけの量産記事、リライト | 取材記事、業界知識や実務経験が前提の専門記事、一次情報のある記事 |
| 編集 | 誤字脱字のチェックだけ | 構成の設計、事実確認、AI下書きの編集、媒体のトーン管理 |
| Web制作 | テンプレートを流用した小規模サイトやLPのコーディング | 要件の整理、公開後の運用と改善、既存システムとのつなぎ込み |
| 受注の形 | 単発の公募案件 | 継続案件、紹介で回ってくる案件 |
左の列に共通するのは、入力と出力がほぼ一対一で、出来上がったものの品質の差が発注側から見えにくいことです。発注側がAIで同程度のものを作れるなら、外注する理由がなくなります。右の列は、何を書くか・何を作るかを決める判断や、結果への責任が含まれる仕事です。ライティングやWeb制作以外の副業も含めた仕分けは、AIに奪われにくい副業・奪われやすい副業にまとめています。
案件数の減少と収入の減少は別の話
30.37%減は投稿された案件の数の変化で、ライター1人あたりの収入が3割減ったという意味ではありません。案件が減っても予算が上がった層では、受注できた人の収入はむしろ増えている可能性があります。逆に、量産案件だけを受けていた人は、件数の減少と応募者の増加を同時に受けます。どちらに入るかは、受けている仕事の中身で決まります。
単価について国内の数字で確認できること
単価が下がったと言われることはあっても、国内のWebライターに絞った単価の推移を示す調査は、この記事で参照した資料にはありません。近い数字として使えるのが、株式会社Hajimariが2026年6月に、IT案件を本業で受けるフリーランス255名から回答を得た調査です。
直近1年の月額単価の変化を見ると、横ばいが86.7%を占め、上がったのは4.7%、下がったのは8.6%でした。AIを使っている135名のうち63.7%は作業スピードが上がったと答えています。速くなったのに、単価はほとんど動いていない。AIを理由にした値下げを経験した人も10.2%いました。
効率化で浮いた分が受注者の報酬にならず、発注側に移っていると読めます。文字単価や時間単価で受けている限り、速く書けるようになっても1本あたりの報酬は増えません。本数を増やせば売上は上がりますが、発注側も同じ計算をして、同じ予算でより多くの本数を求めるようになります。この構造はフリーランスの単価が上がらない理由で詳しく扱っています。
報酬の全体像は、ランサーズ「フリーランス実態調査 2024年」(調査期間2025年1月16〜20日、有効回答2,929名)で確かめられます。2024年にフリーランスとして報酬を得た人の約7割は年間報酬99万円以下で、層としては10万円未満が最も多くなっています。副業系・複業系のワーカーに低収入が多い傾向もありました。同じ調査では言語生成AIの活用率が3割以下で、約半数が活用していないし興味もないと答えています。
この数字から読めるのは、AIを使う受注者と使わない受注者が同じ市場に混在していることです。文字単価や時間単価で受けているなら、AIで短縮できた時間を本数の追加に回すより、構成案や事実確認のように報酬を別に見積もれる作業に回すほうが、収入に結びつきやすくなります。
今でも成り立つ3つの形
数字が示しているのは、書く・作るという作業だけを売る形が成り立ちにくくなったことです。裏返すと、作業に判断や知識や責任を足した形は、今も成り立っています。
専門分野を持って書く
不動産、会計、人事労務、製造業の品質管理など、業界の実務を知っている人にしか書けない記事があります。AIは一般論の文章なら速く出せますが、現場の手順や業界の慣習を正確に書くには、その分野の経験が要ります。発注側にとっても、事実確認の手間が減るぶん、専門性のあるライターに払う理由がはっきりしています。
会社員が副業で書く場合、この点は有利に働きます。本業の業界知識がそのまま強みになるからです。ただし、勤務先の情報や顧客の情報を書かないこと、就業規則で同業他社の仕事が制限されていないかを先に確かめることが前提になります。
AIで速く書き、編集で差をつける
AIを使うだけでは、長く続く差にはなりません。発注側も競合も同じ道具を使えるからです。差がつくのは、AIの下書きをどう直すかです。構成が読者の疑問の順番に沿っているか、数字や固有名詞が正しいか、媒体の言葉づかいに合っているかを判断して直せる人は、書く人より編集する人として評価されやすくなります。
AIを使って納品するときは、発注先やクラウドソーシングの規約でAI利用の申告や禁止の定めがないかを確認します。著作権や商用利用の扱いも、案件ごとに契約書や募集要項で確かめておきます。確認する項目の一覧は生成AIを副業に使うルールにあります。
制作からディレクションへ移る
Web制作では、コーディングやデザインの作業だけを受ける形から、何を作るかを決める側へ移る人が残っています。具体的には次のような仕事です。
- 発注者の目的を聞き取って、サイトに必要なページと機能を決める
- ライターやデザイナー、AIを組み合わせて進行を管理する
- 公開後のアクセスや問い合わせを見て、改善の優先順位をつける
こうした仕事は、発注者との関係そのものが受注の理由になります。株式会社LiKGの「フリーランス実態調査」(2026年2月発表、フリーランス200名)では、案件の獲得経路で紹介経由が58.5%を占めました。一度任せた相手に次も頼む、という発注のされ方は、AIでは置き換えにくい部分です。3つの形のどれを選ぶかは、本業の知識、編集の経験、制作の技術のどれを持っているかで変わり、その選び方は最後の章で扱います。
自分の仕事がどちら側にあるかを判定する
今ライターや制作の仕事をしている人も、これから始める人も、受けている仕事や受けようとしている仕事を次の項目で見てみてください。
置き換わりやすい側にいるかの目安
- 指示書のとおりに書けば完成し、自分で何を書くかを決める場面がない
- 報酬が文字数や作業時間だけで決まっている
- 同じ発注者から継続して頼まれたことがない、または単発の公募だけで受けている
- 納品物について、発注者から内容の相談を受けることがない
- 自分の経験や知識がなくても、同じものを他の人が作れる
当てはまる項目が多いなら、今の仕事は置き換わりやすい側にあります。その場合は、同じ発注者に構成案から出す、事実確認まで引き受けると申し出る、本業の分野の案件に寄せる、といった形で仕事の範囲を少しずつ変えていきます。
ほとんど当てはまらないなら、案件数の減少はそれほど気にしなくてよい位置にいます。むしろ、単価の交渉や継続案件の条件を見直す時期です。どちらとも言えない場合は、受けている案件を1件ずつこの基準で分けてみると、減らすべき仕事と増やすべき仕事が見えてきます。
副業で受ける業務委託もフリーランス法の対象になり得る
2024年11月1日に施行されたフリーランス法は、従業員を使わない個人が業務委託を受ける取引に適用され、会社員の副業も含まれ得ます。発注側は取引条件を書面等で示す必要があり、従業員を使う事業者であれば報酬を60日以内に支払う義務もあります。継続的な委託では、一方的な減額や買いたたきも禁止です。AIの利用を理由に受注後の減額を持ちかけられたら、まず契約時に示された条件と照らし合わせます。条件を書面等で受け取っておくことが、そのときの確認材料になります。
副業で始めるなら何を選ぶか
WebライターやWeb制作は、入口としては今も始めやすい仕事です。ただし、入口の量産案件に長くとどまると、件数の減少と応募者の増加の両方を受けます。最初から抜け出す方向を決めておくほうが、続けた時間が収入に結びつきます。
本業で積んだ業界知識があるなら、その分野の専門記事から始めるのが近道です。最初の数件は実績づくりと割り切っても、専門性のある書き手として継続を頼まれる可能性があります。
特定の専門がなく、文章を書いた経験も少ないなら、まず小さな案件で納品までの流れを経験し、その後は編集や構成を引き受ける方向に寄せていきます。文字単価の低い量産案件だけで月数を重ねるのは避けたほうがよい選択です。
デザインやコーディングができるなら、新規のサイト制作だけでなく、既存サイトの修正や運用を継続で受ける形を狙います。運用を任されると、発注者との関係が続き、ディレクション寄りの仕事に広がりやすくなります。
独立まで考えている人は、副業の段階でこの形をつくれるかを確かめてから判断しても遅くありません。フリーランス全体の状況と、会社員が取れる選択肢はフリーランスは終わりなのか|2026年に起きている3つの変化と、会社員が取れる現実的な選択で整理しています。
始める仕事の方向が決まったら、次は案件を探す場所です。副業サービスの比較で、ライティングや制作の案件を扱うサービスを確かめ、専門記事・編集・運用のうち自分が狙う形の案件が出ているかで登録先を絞ります。具体的な進め方は次の記事にまとめています。
- Webライターの副業|勉強から初受注・継続までのロードマップ … 初受注から継続案件につなげるまでの順番
- 初めてのライティング案件の選び方|報酬・テスト・修正条件を確認 … 量産案件を避けるための条件の見方
- デザイン副業の始め方 … 制作系の副業を始めるときの準備
この記事で参照した資料
- Demirci・Hannane・Zhu「Who Is AI Replacing? The Impact of Generative AI on Online Freelancing Platforms」(大手グローバルフリーランスプラットフォームの求人138万件、2021年7月〜2023年7月)
- Indeed 求人データ(Business Insider Japan 2025年8月報道、米国、2022年10〜11月と2024年10〜11月の比較)
- 株式会社Hajimari 本業でIT案件を受けるフリーランスへの調査(2026年6月、255名)
- ランサーズ「フリーランス実態調査 2024年」(調査期間2025年1月16〜20日、有効回答2,929名)
- 株式会社LiKG「フリーランス実態調査」(2026年2月発表、フリーランス200名)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法、2024年11月1日施行)
この記事に書いた制度や調査の内容は 2026年10月1日 に発表元の資料で確認しました。制度や数値は変わることがあるため、最新の情報は発表元で確認してください。




