フリーランスはオワコンなのか|AIで仕事が減る職種・残る職種の分かれ目

AIで減っているのはフリーランスの仕事全体ではなく、成果物が定型でAIに代わりが利く種類の案件です。海外の求人138万件を分析した研究では、ライティングや開発、グラフィックデザインの案件投稿が減った一方、自動化されやすい職務で残った案件は予算も求められるスキルも上がっていました。日本のIT案件の調査でも、単価が横ばいの人が大半です。この記事では、自分の仕事が減る側と残る側のどちらに近いかを3つの軸で判定し、副業で始めるならどの種類の仕事を選ぶかを決められるようにします。

この記事の目次 6項目

オワコンと言われる根拠を職種別の数字で確認する

フリーランスはオワコンだという話の根拠として持ち出されることが多いのは、生成AIの公開後に案件が減ったという海外のデータです。代表的なものを2つ確認しておきます。

1つ目は、Demirci・Hannane・Zhuの論文「Who Is AI Replacing? The Impact of Generative AI on Online Freelancing Platforms」です。2021年7月から2023年7月の2年間に、大手グローバルフリーランスプラットフォームへ出された138万件の求人を対象に、ChatGPTや画像生成AIが広まる前と後で、案件の投稿数が職種ごとにどう変わったかを比べています。

職種 比較のきっかけ 案件投稿数の変化
ライティング ChatGPTの公開 30.37%減
ソフトウェア・アプリ・Web開発 ChatGPTの公開 20.62%減
エンジニアリング ChatGPTの公開 10.42%減
グラフィックデザイン 画像生成AIの普及 18.49%減
3Dモデリング 画像生成AIの普及 15.57%減

2つ目は求人サイトIndeedのデータです。Business Insider Japanが2025年8月に報じた内容では、米国で2022年10〜11月と2024年10〜11月の求人を比べたところ、モバイル開発者の求人は72%減、Java開発者は70%減でした。

数字だけを並べると、書く仕事も作る仕事も急速に消えていくように見えます。オワコンという言い方が広がった背景はこのあたりにあります。ただ、どちらも読み方を間違えやすいデータです。

海外の減少率を、日本の副業の見通しとしてそのまま使わない

Demirciらの調査は海外の大手プラットフォームの案件数で、日本のクラウドソーシングや紹介で動く案件は含まれていません。Indeedのデータは米国の求人の比較で、日本の業務委託の案件を直接示すものではありません。どちらも変化の方向を知る材料にはなりますが、減少率を自分の仕事が減るペースとして読むと判断を誤ります。

減ったのは単純な案件で、残った案件は予算と要求が上がった

Demirciらの論文には、案件数の減少と同じ時期に起きていた別の変化も記録されています。自動化されやすい職務では、案件1件あたりの最大予算は5.71%増、スキル要件の複雑さは2.18%増でした。簡単な案件がAIに置き換わり、プラットフォームに残ったのは、AIだけでは片づかない少し難しい案件だった、という読み方ができます。

同じ職務で、1件あたりの入札数は8.57%増えています。案件が減ったぶん、残った案件に応募が集まったと読めます。残った案件は予算が上がった一方で、取り合いも激しくなっているということで、この2つは同時に進んでいます。

Indeedのデータも似た構図です。モバイル開発やJavaのように、特定の言語でコードを書く作業として切り出しやすい職種の求人は減りましたが、ERPの導入・運用、AIアーキテクト、データセンター技術者の求人は増えています。減った側は書く量で価値が測られやすく、増えた側は業務全体の設計や、止まると困るシステムの運用を担う仕事です。

2つのデータを合わせると、起きているのはフリーランスという働き方の消滅ではありません。自動化しやすい単純な業務が減り、残った仕事の要求水準が上がったという変化です。人口の増加や法律の影響も含めた全体像はフリーランスは終わりなのか|2026年に起きている3つの変化と、会社員が取れる現実的な選択で整理しているので、ここからはAIと仕事の中身の関係に絞って見ていきます。

日本のフリーランスはAIの影響をどう受け止めているか

海外の数字と比べると、日本の調査に出てくる状況はかなり落ち着いています。

株式会社Hajimariが2026年6月に、本業でIT案件を受けるフリーランス255名に聞いた調査では、直近1年で月額単価が変わらなかった人は86.7%、下がった人が8.6%、上がった人が4.7%でした。AIを理由にした値下げを経験した人は10.2%です。AIで仕事が減る不安を持つ人は39.6%いるものの、IT案件の単価にこの1年で大きな下落は出ていません。

株式会社LiKGが2026年2月に発表した「フリーランス実態調査」(フリーランス200名)では、AIの台頭で仕事がなくなる不安を挙げた人は8.5%でした。同じ調査で収入の不安定さへの不安は57.5%あり、AIよりも収入の波のほうがずっと大きな心配ごとになっています。

差が出ているのは、AIの使い方です。Hajimariの調査では、AIをほとんど使っていない人が47.1%、業務効率化に使っている人も同じく47.1%で、AIを組み込んだ開発をしている人は3.1%、AIモデルやエージェントの設計をしている人は2.7%にとどまりました。AI利用者135名に限ると、63.7%が作業スピードが上がったと答えています。対象をIT以外にも広げたランサーズ「フリーランス実態調査 2024年」(調査期間2025年1月)では、言語生成AIを活用している人が3割に届かず、活用していないし興味もないと答えた人が約半数を占めました。

IT案件の単価を見る限り、日本ではまだ、AIの影響が単価にはっきり出る手前にあると考えられます。ただし海外では、AIで代わりが利く案件から先に減るという順番で変化が進みました。同じ順番がこれから日本で進むなら、影響が数字に出る前に、自分の仕事がどちら側にあるかを確かめておく意味があります。効率化しても単価が横ばいのまま動かない仕組みは、フリーランスの単価が上がらない理由で詳しく扱っています。

減る仕事と残る仕事を分ける3つの軸

職種名で仕分けようとすると、同じライターでも同じエンジニアでも結果が割れてしまいます。見るべきは職種ではなく仕事の中身で、ここでは3つの軸に分けて整理します。

成果物が定型か

発注時の指示がそのまま成果物の仕様になる仕事があります。決まった構成のSEO記事、テンプレートに沿ったバナー、仕様書どおりの画面実装などです。こうした仕事は、指示文をAIに渡せばかなりの部分ができてしまいます。Demirciらの調査で減少幅が大きかったライティング、Web開発、グラフィックデザインは、こうした指示どおりに作る案件が成り立ちやすい職種でもあります。

反対に、何を作るべきかを顧客と一緒に決めるところから始まる仕事は、AIに渡す指示文そのものがまだ存在しません。要件を言葉にする工程が人に残るため、丸ごとの置き換えは起きにくくなります。

責任を引き受けるか

納品物に誤りがあったとき、誰が説明し、直し、影響を受け止めるのか。AIは成果物を出せても、その責任は負いません。専門性の高い原稿の監修、本番環境で動いているシステムの運用、予算を預かる広告運用のように、間違えたときの影響が大きい仕事ほど、人に発注する理由が残ります。Indeedのデータで求人が増えていたERPの導入・運用やデータセンター技術者は、この軸で説明しやすい例です。

顧客との関係があるか

同じ取引先から続けて発注を受け、相手の事業や社内の事情を知っていること自体が価値になっている仕事は、成果物だけを比べる形では置き換えにくくなります。LiKGの調査では、案件獲得の経路として紹介経由が58.5%でした。紹介経由の案件は、公募のプラットフォームで価格と納期だけで比べられる仕事とは、競争の条件がかなり違います。

軸 減りやすい側 残りやすい側
成果物 指示どおりに作る定型の成果物 何を作るかを決める段階から関わる
責任 納品で終わり、誤りの影響を負わない 誤りの説明・修正・運用まで引き受ける
顧客との関係 公募で毎回新しい相手と取引する 継続や紹介で、相手の事情を知っている
AIとの関係 AIの出力と同じものを売っている AIで作業を速くし、浮いた時間を判断に使う

4行目のAIとの関係は、3つの軸すべてにかかわる補足です。左の列に当てはまる行が多いほど、今の仕事は減る側に寄っています。

自分の仕事がどちら側かを判定する

3つの軸は、どれか1つで白黒が決まるものではありません。今の仕事、またはこれから始めたい副業を、次の質問に当てはめてみてください。

判定のための5つの質問

  • 発注時の指示文をそのままAIに渡したら、納品できる水準に近いものが出てくるか
  • 納品後に誤りが見つかったとき、修正だけでなく説明や対応まで求められる立場か
  • 続けて発注をくれる取引先、または紹介で仕事をくれる人がいるか
  • 顧客が自分に頼む理由を、価格と納期以外の言葉で説明できるか
  • AIで短くなった作業時間を、要件の整理や品質の確認に回せているか

1つ目にはいと答え、2〜5つ目にいいえが並ぶなら、その仕事は減る側に近い位置にあります。すぐになくなるとは限りませんが、海外で起きた順番を見ると、案件数と単価の両方で圧力を受けやすい仕事です。2〜5つ目に複数のはいがあるなら、成果物を作る部分がAIで速くなっても、人に頼む理由が残っています。

判定の結果が減る側だったとしても、職種ごと変える必要があるとは限りません。ライターなら量産記事から取材や専門分野の記事、編集へ、Web制作ならテンプレートでの制作から要件の整理やディレクションへと、同じ職種の中で残る側へ寄せていく道があります。ライティングとWeb制作で何が減り、どんな形なら今でも成り立つのかはWebライター・Web制作はオワコンなのかで具体的に扱っています。

AIを使う側に回ることと、AIと同じものを売ることは別

AIで作業が速くなっても、時間単価で請けている限り、同じ報酬で多くの量をこなす形になりやすく、収入は増えにくいままです。Hajimariの調査で、単価を上げる打ち手がわからないと答えた人が31.0%いたことは、この構造とつながっていると考えられます。AIで浮いた時間を量の追加に使うのか、要件の整理や品質の確認といった判断の仕事に使うのか。その違いが、減る側と残る側を分けます。

副業で始めるなら、残る側の仕事を選ぶ

これから副業を始める会社員にとって、ここまでの話は仕事の選び方に直結します。

会社員のまま副業を始めると、最初の案件はクラウドソーシングなどの公募で探すことが多くなります。公募で入りやすい仕事ほど定型で、AIの影響を受けやすい側にあります。入口として定型の案件を請けること自体に問題はありません。ただ、それだけを続けていると、先に縮む市場に長くとどまることになります。

選び方の目安は、本業との関係で変わります。本業で責任を持って扱っている業務や専門知識があるなら、それを転用できる副業を選ぶほうが、最初から残る側に近い位置で始められます。本業と関係のない分野で始めるなら、定型の作業から入ってもかまいませんが、継続して発注をくれる取引先をつくり、作業の前後にある企画・確認・運用の工程へ関わる範囲を広げることを最初から計画に入れておくと、AIの影響を受けにくい形に移っていけます。

独立を考えている場合も、この順番は変わりません。副業の段階で残る側の仕事を受注できるかどうかを確かめておけば、辞めるかどうかを感覚ではなく受注の実績で判断できます。どの副業がAIに奪われにくいかの仕分けや、AIを副業に使うときのルール、報酬の型の違いは、次の記事で確認できます。

副業サービスの比較を見るときは、登録できる案件の多さよりも、継続の取引や責任のある工程に関われる仕組みがあるかを確かめてください。そこを基準に選ぶと、最初の副業から残る側の仕事に近づけます。

この記事で参照した資料

  • Demirci・Hannane・Zhu「Who Is AI Replacing? The Impact of Generative AI on Online Freelancing Platforms」(大手グローバルフリーランスプラットフォームの求人138万件、2021年7月〜2023年7月)
  • Indeedの求人データ(Business Insider Japan、2025年8月報道。米国、2022年10〜11月と2024年10〜11月の比較)
  • 株式会社Hajimari フリーランス調査(2026年6月、本業でIT案件を受けるフリーランス255名)
  • 株式会社LiKG「フリーランス実態調査」(2026年2月発表、フリーランス200名)
  • ランサーズ「フリーランス実態調査 2024年」(調査期間2025年1月16〜20日、有効回答2,929名)

この記事に書いた制度や調査の内容は 2026年10月1日 に発表元の資料で確認しました。制度や数値は変わることがあるため、最新の情報は発表元で確認してください。

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