
AIに奪われやすいかどうかは、職種の名前よりも仕事の形で決まります。海外の大手フリーランスプラットフォームの求人を分析した研究では、ChatGPTの公開後にライティング案件が30.37%減るなど、成果物が定型で画面の上だけで完結する仕事から案件が減りました。仕事の形から見ると、現場で体を動かす仕事、判断や責任を引き受ける仕事、人との関係が売り物になる仕事、AIを道具として使う側の仕事は代わりにくい側に入ります。これから始めるなら代わりにくい側から、使える時間と本業の経験に合う系統を選ぶのが現実的で、記事中の仕分け表に自分の仕事を当てはめれば判断できます。
この記事の目次 6項目
AIに奪われやすい副業は、成果物が定型で画面の上で完結する
Demirci・Hannane・Zhuの研究「Who Is AI Replacing? The Impact of Generative AI on Online Freelancing Platforms」は、大手グローバルフリーランスプラットフォームに投稿された求人138万件(2021年7月〜2023年7月)を分析したものです。ChatGPTの公開後、ライティング案件の投稿数は30.37%減り、ソフトウェア・アプリ・Web開発は20.62%減、エンジニアリングは10.42%減でした。画像生成AIが広まった後には、グラフィックデザインが18.49%減、3Dモデリングが15.57%減っています。
減り方の大きい職種を並べると、仕事の形に共通点が見えてきます。
一つ目は、成果物が定型であることです。商品説明文、検索キーワードに合わせた量産型の記事、決まったサイズのバナーなどは、指示の段階で完成形がほぼ決まっています。完成形が決まっている仕事ほど、AIに同じ指示を渡せば似たものが出てきます。
二つ目は、入力と出力が一対一で対応していることです。原稿を受け取って訳文を返す、音声を受け取って文字にする、紙の情報を表に打ち込む。途中で作業者の判断が入らないため、工程ごとAIや自動化ツールに置き換えやすい仕事です。
残る二つは組み合わさって効きます。発注から納品まで画面の上で完結する仕事は、発注者が同じ画面で自分でAIに頼むという選択肢を持っています。そこに出来の差が発注者に見えにくいという条件が重なると、少し良い成果物より、すぐ手に入る無料の成果物が選ばれがちです。品質の違いを説明できない仕事は、価格と速さでしか比べてもらえません。
この調査をそのまま日本の副業に当てはめない
Demirciらの研究が見ているのは、海外の大手プラットフォームで公募される案件で、期間も2023年7月までです。日本の会社員が知人の紹介で受ける業務委託や、家事代行・配達のような対面の仕事は対象に入っていません。株式会社LiKGの「フリーランス実態調査」(2026年2月発表、フリーランス200名)では、案件獲得の58.5%が紹介経由でした。公募型の数字は傾向をつかむ材料として使い、自分の仕事の受け方に合わせて読み替えてください。
数字が示しているのは、仕事が消えたことより要求が上がったこと
同じ研究には、減少率とは逆向きの数字も出ています。自動化されやすい職務では、案件あたりの最大予算が5.71%増え、1件あたりの入札数は8.57%増え、求められるスキルの複雑さは2.18%上がりました。簡単な案件が市場から抜け、残った案件は難しくなり、そこに応募者が集中している、という読み方ができます。
職種の内側で明暗が分かれる例もあります。Business Insider Japanが2025年8月に報じたIndeedの求人比較(米国、2022年10〜11月と2024年10〜11月の比較)では、モバイル開発者の求人が72%減、Java開発者が70%減でした。一方で、ERPの導入・運用、AIアーキテクト、データセンター技術者の求人は増えています。特定の言語で書く作業は減り、仕組み全体を設計して運用する仕事は増えた、という分かれ方です。
国内のIT系フリーランスについては、株式会社Hajimariの調査(2026年6月、本業でIT案件を受けるフリーランス255名)があります。直近1年の月額単価は横ばいが86.7%、上がったが4.7%、下がったが8.6%でした。AIを理由に値下げされた経験は10.2%、AIで仕事が減る不安がある人は39.6%です。LiKGの調査では、AIの台頭で仕事がなくなる不安を挙げた人は8.5%にとどまっています。対象も設問も違うため単純には比べられず、AIへの受け止め方には調査によって大きな幅があると読むのが妥当です。
ここから言えるのは、職種名で安全か危ないかを決めるのは粗すぎるということです。ライティングでも開発でも、定型部分は減り、判断を伴う部分は残っています。始めようとしている副業があるなら、職種名ではなく、その中のどの工程を引き受けるのかで見直してください。職種ごとの分かれ目はフリーランスはオワコンなのか|AIで仕事が減る職種・残る職種の分かれ目で詳しく整理しています。
奪われにくい副業の条件は、体・判断・関係・AIを使う側
奪われにくい側の特徴は、前の章の裏返しになります。ただし、ここから先は調査の数字が直接示していることではなく、仕事の形から考えた整理です。Demirciらの研究はオンラインの公募案件だけを見ているので、対面の仕事が増えたか減ったかは分かりません。
最もわかりやすいのは、現場に体があることです。家事代行、配達、引っ越しやイベント設営の手伝い、対面の教室などは、AIが文章や画像をどれだけ上手に作れても、作業そのものを代わりにこなせません。
次に、判断や責任を引き受ける仕事があります。記事の企画を決めて外注先に指示を出すディレクション、公開前に事実関係を確かめる校閲、業務の進め方を決める相談役などは、AIが案を出しても、最後に誰がそれでよいと決めたのかが問われます。発注者が買っているのは作業量ではなく、判断を任せられる安心です。
関係性そのものが売り物になっている仕事も、残りやすい側に入ります。前述のLiKG調査で紹介経由の受注が58.5%だったように、フリーランスの仕事は人のつながりから回ってくる割合が大きいものです。継続している顧客、地域の常連、教え子の家族といった関係は、AIの性能が上がっても乗り換えの理由になりにくいでしょう。
最後は、AIを使う側に立つことです。Hajimariの調査では、AIをほとんど使っていない人が47.1%、業務効率化に使っている人が47.1%でした。AI利用者135名のうち63.7%が、作業スピードが上がったと答えています。ランサーズの「フリーランス実態調査 2024年」でも、言語生成AIの活用率は3割以下で、活用していないし興味もないという人が約半数でした。使える人がまだ多数派ではない以上、AIを使って速く作り、仕上げを自分の判断で行える人には、差をつける余地があります。
奪われにくい仕事にも弱点がある
現場に体がある仕事の多くは、働いた時間に応じて報酬が決まる時間型です。平日の夜と週末しか使えない会社員の場合、稼げる額の上限が早い段階で見えます。AIを使う側の仕事にも別の壁があり、Hajimariの調査では作業が速くなった人が多い一方で、単価は横ばいが86.7%でした。速くなった分が報酬に反映されない構造は、フリーランスの単価が上がらない理由|AIで効率化しても報酬が変わらない構造で説明しています。奪われにくいことと、十分に稼げることは別の問題として分けて考えます。
2026年の副業仕分け表
ここまでの特徴をもとに、副業として選ばれやすい仕事を仕分けました。判定は仕事の形から見たもので、職種名だけで一律に決まるものではありません。同じ文章の仕事でも、量産型と取材型では判定が変わります。
| 副業(具体例) | 仕事の形 | 判定 | 副業で選ぶときの見方 |
|---|---|---|---|
| データ入力(名刺・アンケートの打ち込み、表の転記) | 入力と出力が一対一、画面で完結 | 奪われやすい | 既存の取引先から続けて頼まれている場合を除き、新しく始める理由は薄い |
| 簡易な翻訳・文字起こし(短文の翻訳、会議音声の書き起こし) | 入力と出力が一対一 | 奪われやすい | 機械の出力を専門知識で直す確認役なら残る余地がある |
| 量産型の記事作成(キーワードに合わせた記事、商品説明文) | 成果物が定型、品質差が見えにくい | 奪われやすい | ライティング案件は30.37%減。量産から入るのは避ける |
| テンプレート型のバナー・簡易Web制作 | 成果物が定型、画面で完結 | 奪われやすい | グラフィックデザインは18.49%減、Web開発を含む区分は20.62%減。テンプレート作業だけでは差がつかない |
| 取材・専門分野の記事、編集(業界知識を使う記事、構成と事実確認) | 判断が入る、関係が続く | 条件次第で残る | 本業の専門分野と結びつくなら残る側に入る。量産記事の単価では受けない |
| 家事代行・清掃 | 現場に体がある | 残りやすい | 時間型。単価より、通える範囲と継続客の数で見る |
| 配達・軽作業(フードデリバリー、イベント設営) | 現場に体がある | 残りやすい | 始めやすいが体力と時間が上限になる |
| 対面で教える仕事(学習塾、楽器やスポーツの指導) | 現場に体がある、関係が売り物 | 残りやすい | 紹介で広がりやすい。教える内容が本業と重なると強い |
| ディレクション・進行管理(外注先への指示、進行と品質確認) | 判断と責任を引き受ける | 残りやすい | 本業での経験が前提。競業と秘密保持の確認が必要 |
| AIを使った制作(AIで下書きや素材を作り、構成と仕上げを自分で行う文章・画像・動画) | AIを使う側、仕上げに判断が入る | 残りやすい | 規約と著作権の確認が先。速さを単価に変える工夫が要る |
表にない仕事は、2列目の仕事の形に当てはめて判定できます。定型か、一対一か、画面で完結するか、出来の差が伝わるか。この4点のうち多く当てはまるほど、奪われやすい側に寄ります。
奪われにくい側の仕事は、さらに二つの系統に分かれます。家事代行や配達のように体を使う系統と、ディレクションやAIを使った制作のように判断を売る系統です。前者は始めやすい代わりに時間型で伸びにくく、後者は本業の経験が要る代わりに単価を上げる余地があります。文章や制作の仕事が今どうなっているかは、Webライター・Web制作はオワコンなのか|単価が下がった実態と、今でも成り立つ形で扱いました。
自分に合う副業を選ぶときの判断基準
仕分け表のどこから選ぶかは、使える時間、本業の経験、副業に求めるものによって変わります。
副業に回せる時間が限られていて、早く収入を得たいなら、体を使う系統から入るのが現実的です。スキルの準備がほとんど要らず、働いた分がそのまま収入になります。ただし時間型なので、収入を増やしたくなった時点で別の系統を足すことになるでしょう。
本業で判断や調整を任されてきた経験があるなら、判断を売る系統を検討する価値があります。本業の知識を使ったディレクションや業務委託は、AIに置き換えにくく、時間ではなく判断に値段をつけやすい仕事です。その場合は、就業規則の副業規定と、本業との競業・秘密保持に触れないかを先に確かめておきます。
文章やデザインの仕事をしたいなら、量産型の案件から入るのではなく、AIで下書きを作り、構成や事実確認や仕上げを自分の判断で行う形を選びます。表の上の方にある案件は始めやすく見えますが、ライティングとデザインの案件数が大きく減った領域でもありました。
将来の独立を見すえて検証したいなら、残りやすい側の仕事で、かつ同じ相手から継続して頼まれる形が向いています。紹介経由の受注が多いという調査結果を踏まえると、単発の案件をこなすより、一つの取引先と関係を続けられるかどうかの方が、独立後の見通しを確かめる材料として有効です。
会社員の副業でも、一人で業務委託を受けていれば、フリーランス法で守られる側に入る可能性があります。2024年11月1日施行のこの法律のもとでは、発注側は取引条件を明示しなければならず、従業員を使う事業者が継続して発注する場合は、報酬の一方的な減額や買いたたきも禁止の対象です。AIで速く作れるはずだという理由で、合意した報酬を後から一方的に下げられたときは、この禁止に当たる可能性があり、交渉の根拠として使えます。
始める前に確認する4つの問い
- その仕事の完成形を、発注者が自分でAIに頼んで作れるか。作れるなら、残るのは安さと速さの競争になる
- 作業の途中に、自分の判断で決める工程があるか
- 同じ相手から続けて頼まれる関係になりやすいか
- 作業時間を増やさずに報酬を上げる道があるか。なければ、上限を承知のうえで始める
次に何をするか|副業で最初に試すこと
AIに奪われにくい副業を選ぶといっても、最初から理想の仕事に就けるわけではありません。現実的なのは、仕分け表の残りやすい側から一つ選び、小さく始めて続けられるかを見ることです。続けられた仕事には取引先との関係や判断の経験が積み上がり、AIに代わられにくい形に近づいていきます。
AIを使った制作を選ぶなら、先に生成AIの使い方のルールを確認してください。クラウドソーシングの規約や著作権の扱いを知らずに納品すると、取引先との信頼を損ねます。体を使う仕事を選ぶなら、時間型の報酬が自分の生活にどの程度足りるのかを、報酬の型から見積もっておきます。
- 生成AIを副業に使うルール|著作権・クラウドソーシング規約・商用利用の現在地 … AIを使う側に立つ前に確認しておくこと
- 報酬の決まり方で副業を分けて考える|時間型・成果型・資産型 … 奪われにくい仕事を、稼ぎ方の型で見直すとき
独立と副業のどちらを選ぶかまで含めて考えたい場合は、フリーランスは終わりなのか|2026年に起きている3つの変化と、会社員が取れる現実的な選択が入口になります。始める仕事の系統が決まったら、副業サービスの比較から、その系統の仕事を扱うサービスを探してみてください。
この記事で参照した資料
- Demirci・Hannane・Zhu「Who Is AI Replacing? The Impact of Generative AI on Online Freelancing Platforms」(大手グローバルフリーランスプラットフォームの求人138万件、2021年7月〜2023年7月)
- Indeedの求人比較(米国、2022年10〜11月と2024年10〜11月、Business Insider Japan 2025年8月報道)
- 株式会社Hajimari 本業でIT案件を受けるフリーランスへの調査(2026年6月、255名)
- 株式会社LiKG「フリーランス実態調査」(2026年2月発表、フリーランス200名)
- ランサーズ「フリーランス実態調査 2024年」(調査期間2025年1月16〜20日)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(2024年11月1日施行)
この記事に書いた制度や調査の内容は 2026年10月1日 に発表元の資料で確認しました。制度や数値は変わることがあるため、最新の情報は発表元で確認してください。




