
フリーランスの人数は増え続けていますが、その大半は副業として少額の報酬を得る層で、市場全体が一様に埋まったわけではありません。混み合っているのは、誰でも応募できて成果物が定型の仕事です。本業の経験をそのまま持ち込める仕事や、AIを業務に組み込む側の仕事には、まだ入る余地が残っています。自分の経験がどちらに近いかを、調査の数字から判断できるように整理しました。
この記事の目次 6項目
フリーランスは何人いるのか|1,303万人と462万人の違い
フリーランスの人数としてよく引用される数字は2つあります。ひとつはランサーズの「フリーランス実態調査 2024年」で、広義のフリーランス人口を1,303万人、経済規模を20兆3,200億円と推計しています。調査期間は2025年1月16〜20日で、2024年にフリーランスとして報酬を得た全国の20〜69歳が対象です。もうひとつは内閣官房の「フリーランス実態調査結果」(2020年)で、本業・副業を含めたフリーランスを462万人、内訳を本業214万人、副業248万人としています。
2つの数字の大きな開きは、主に数え方の違いによるものです。ランサーズの調査は働き方を副業系・複業系・自由業系・自営業系に分け、会社員が本業の外で報酬を得たケースも広く含めています。内閣官房の数字は2020年時点のもので、副業248万人が本業214万人を上回っていました。調査時期も対象の取り方も異なるため、2つを並べて増加数を計算することはできません。どちらが正しいかではなく、1,303万人には少額の副業収入の人が多く含まれていると押さえておけば十分です。
ランサーズの調査では、この10年で人口が39.1%、経済規模が38.8%増えています。人数と市場の大きさがほぼ同じ率で伸びているため、単純に割ると1人あたりの報酬は10年前とほとんど変わっていない計算になります。人が増えたぶん市場も広がっているので、平均で見る限り、1人あたりの取り分が大きく縮んだ形にはなっていません。
人口の数字だけで飽和を判断しない
人数が多いことと、自分が入りたい領域で競争が激しいことは別の話です。同じ調査で年間報酬10万円未満の層が最も多いことからも、1,303万人の多くは本業の外で小さく報酬を得ている人だと読み取れます。飽和を判断するには、総数ではなく、狙う仕事に何人が応募しているか、単価がどう動いているかを見る必要があります。
人数の大半は副業系と低収入層|収入は二極化している
同じランサーズの調査では、年間報酬が99万円以下の人が約7割を占め、なかでも10万円未満の層が最多でした。収入に満足している人は32.0%にとどまります。働き方別に見ると、副業系・複業系のワーカーには低収入が多く、自由業系・自営業系は比較的高い収入の傾向が出ています。
プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の「フリーランス白書2026」(調査期間2025年11月)では、分布の形が変わります。年収400万円以上が49.5%、200〜400万円未満が27.7%でした。月間稼働140時間以上、つまりフルタイム相当で働く人が48.5%を占めており、フリーランスを本業とする人の比重が大きい調査です。前年の白書2025でも年収400万円以上は47.7%で、世帯収入の8割以上を自分の収入で支えている人も45.7%いました。
| 調査 | 対象 | 収入の主な数字 |
|---|---|---|
| ランサーズ「フリーランス実態調査 2024年」 | 2024年にフリーランスとして報酬を得た20〜69歳(有効回答2,929名) | 年間報酬99万円以下が約7割、10万円未満が最多 |
| フリーランス協会「フリーランス白書2026」 | フリーランス(調査期間2025年11月) | 年収400万円以上49.5%、200〜400万円未満27.7% |
| LiKG「フリーランス実態調査」(2026年2月発表) | フリーランス200名 | 年収400万円以下52%、1,001万円以上5% |
調査ごとに対象の取り方が違うため、数字をそのまま並べて比べることはできません。それでも、広く数えると低収入の層が大半を占め、本業として続けている人に絞ると年収400万円前後を境に半々に分かれる、という大まかな形は読み取れます。
飽和しているかどうかを考えるうえで、この二極化は手がかりになります。人数の大半を占めるのは少額の副業層の側で、そこに新しく入る人は、同じように始めたばかりの大勢と同じ案件を取り合うことになります。本業として成り立っている層は仕事の取り方が違い、入り口も別です。これから始める人は、どちらの入り口から入るかで競争相手が変わると考えてください。
混み合っているのは、誰でも応募できる定型の仕事
どの仕事が混み合っているかは、海外の研究に具体的な数字があります。Demirci・Hannane・Zhuの論文「Who Is AI Replacing? The Impact of Generative AI on Online Freelancing Platforms」は、大手グローバルフリーランスプラットフォームの求人138万件(2021年7月〜2023年7月)を分析したものです。減り方が最も大きかったのはChatGPT公開後のライティング案件で、投稿数が30.37%減でした。ソフトウェア・アプリ・Web開発の20.62%減がそれに続き、画像生成AIの普及後にはグラフィックデザインの案件も18.49%減っています。
注目したいのは、案件の数が減っただけではない点です。自動化されやすい職務では、1件あたりの入札数が8.57%増えていました。案件が減り、応募する人は増えたので、自動化されやすい仕事では1件をめぐる競争が厳しくなっています。飽和という言葉が実態に合うのは、まさにこの部分です。
同じ職務では、1件あたりにかけられる最大予算が5.71%増え、要求されるスキルの複雑さも2.18%増していました。単純な依頼から先に抜けていき、予算をかけてでも人に任せたい案件が残った、と読むのが自然です。ライティングやWeb制作で何が減って何が残ったかは、Webライター・Web制作はオワコンなのかで職種ごとに掘り下げています。
データ入力や文字起こしのような作業について、この記事で参照した調査に数字はありません。ただ、入力と出力が一対一に決まっていて、仕上がりの差が見えにくい点は量産記事やテンプレート型のサイト制作と共通しています。同じ側に入ると考えておくのが安全です。
海外のデータをどこまで当てはめるか
この研究は海外の大手プラットフォームを対象にしたもので、日本の数字ではありません。米国の求人を比べたIndeedのデータ(Business Insider Japan 2025年8月報道、2022年10〜11月と2024年10〜11月の比較)でも、モバイル開発者の求人が72%、Java開発者が70%減る一方、ERPの導入・運用やAIアーキテクト、データセンター技術者は増えていました。いずれも国内の傾向を直接示すものではありませんが、日本の公募型の案件サイトも、誰でも応募できて成果物で比べられるという構造は同じです。どの種類の仕事が先に混み合うかの参考として使えます。
紹介で仕事が回る層は、別の市場にいる
公募の案件サイトが混み合う一方で、フリーランスとして仕事を続けている人の多くは、公募とは別の経路で仕事を得ています。株式会社LiKGの「フリーランス実態調査」(2026年2月発表、フリーランス200名)では、案件を得た経路の58.5%が紹介経由でした。会社員経験者は回答者の74.5%に上り、その約半数が10年以上企業で働いてから独立しています。
この層にとっての入場券は、過去の勤務先や取引先との関係と、そこで積んだ実績です。紹介で来る仕事は、応募者を並べて比べる前に、頼む相手がほぼ決まっています。公募サイトで初めての受注を目指す人とは、そもそも同じ土俵で競っていません。
単価の動きにも、この市場の性格が出ています。本業でIT案件を受けるフリーランス255名を対象にした株式会社Hajimariの調査(2026年6月)を見ると、直近1年の月額単価は86.7%の人が横ばいで、下がった人は8.6%、上がった人は4.7%にとどまりました。大きく崩れてもいなければ、伸びてもいません。入札が集まる公募の案件とは様子が違いますが、単価を上げる打ち手が「わからない」と答えた人も31.0%いて、安泰とも言い切れない状態です。
回答者の年齢構成は50代が110名と最も多く、40代と60代がそれに続きます。長く働いてきた人が経験を持ち込んで成り立っている市場だと考えると、会社員がこれから入るときの道筋も見えてきます。本業の業界や職種の延長で仕事を受けるなら、紹介の市場に近い位置から始められます。経験のない分野に公募から入るなら、混み合った側から始めることになります。
新規参入が厳しい領域と、まだ入れる領域の見分け方
ここまでの数字を、参入のしやすさで並べ直すと次のようになります。厳しいかどうかは職種名だけでは決まらず、同じライティングでも量産記事と専門分野の記事では状況が違う点に注意してください。
| 領域 | 根拠になる数字 | 新規参入 |
|---|---|---|
| 量産型の記事作成 | ライティング案件の投稿数30.37%減、自動化されやすい職務で入札数8.57%増(Demirci) | 厳しい。単価で選ばれる競争になりやすい |
| テンプレート型のWeb制作・アプリ開発 | Web開発等20.62%減(Demirci)、モバイル開発者の求人72%減(Indeed、米国) | 厳しい。AIで代わりが利く作業と比べられる |
| 定型のグラフィック制作 | グラフィックデザイン18.49%減(Demirci) | 厳しい。画像生成AIと比べられる |
| 専門分野の記事・編集・ディレクション | 自動化されやすい職務でも最大予算5.71%増、要求スキル2.18%増(Demirci) | 本業の専門性があれば入れる |
| AIを業務に組み込む仕事 | AIを組み込んだ開発3.1%、モデル・エージェント設計2.7%(Hajimari) | 担い手がまだ少ない |
| 本業の延長で紹介が届く仕事 | 案件獲得の紹介経由58.5%(LiKG) | 公募とは別の市場。関係があれば入れる |
AIを使う側に回っている人が少ない傾向は、ほかの調査にも出ています。ランサーズの調査で言語生成AIを活用している人は3割を下回り、約半数は「活用していないし興味もない」と答えました。IT案件に絞ったHajimariの調査でも、AIを組み込んだ開発やモデル・エージェント設計まで手がける人は、表に挙げたとおりごく少数です。AIを仕事の仕組みに組み込んで納品できる人は、まだ一部にとどまっています。AIで減る仕事と残る仕事の分かれ目は、フリーランスはオワコンなのかで職種別に整理しています。
自分がどちらに当てはまるかは、次のように考えると判断しやすくなります。狙っている案件が未経験歓迎で作業手順が決まっているなら、その領域は入札が集まる側です。入ることはできても、しばらくは単価の低い競争を覚悟することになります。本業で扱っている業界知識や業務の流れを仕事に持ち込めるなら、要求の高い案件や紹介の市場に近い側にいます。公募で価格を競うより、経験を説明して選ばれる形をとりやすくなります。
まだ入れる側にいるかを確かめる問い
- 発注者が成果物を見ただけでは良し悪しを判断できない、業界知識や専門性が仕事に含まれているか
- 同じ案件にAIで作業する応募者が来ても、自分が選ばれる理由を一文で説明できるか
- 要件の整理、品質の確認、納期の管理など、作業の外側の責任まで引き受けられるか
- 過去の職場や取引先に、仕事の相談を持ちかけられる相手がいるか
- AIを自分の作業に組み込み、その手順を発注者に説明できるか
ほとんどに答えられないなら、その領域は今から入ると価格で比べられる側です。半分以上に答えられるなら、混み合っていない入り口を探せる位置にいます。
今から入るなら、会社員のまま副業で小さく試す
数字を見る限り、フリーランス市場が全体として飽和したとは言えません。ただ、誰でも入れる入り口は混んでおり、その混み具合は外から眺めているだけではわかりません。だからこそ、会社を辞める前に、副業で実際に1件受けてみるのが、手間もリスクも小さい確かめ方です。
独立を考えている会社員なら、最初の受注がどの経路で来たかを見てください。公募サイトでしか取れず、単価の低い案件にしか通らないなら、独立の前に領域を選び直す必要があります。本業の知人や取引先から相談が来るなら、紹介の市場に入れる見込みがあり、次は継続案件を増やす段階です。すでにフリーランスで公募中心の働き方をしているなら、本業時代の経験に近い領域へ寄せるか、AIを組み込む側の仕事を足すことを検討できます。
従業員を使わずに業務委託で仕事を受けるなら、会社員の副業でもフリーランス法(2024年11月1日施行)の対象になり得ます。発注側には取引条件の書面等での明示が義務づけられ、発注側が従業員を使う事業者であれば60日以内の報酬支払いも求められます。1件目から報酬額・納期・支払日が書面で示されているかを見ておけば、条件の悪い発注先を早めに見分けられます。
独立するか、会社員を続けるかの全体の判断は、フリーランスは終わりなのかで3つの変化から整理しています。値付けの考え方は報酬の決まり方で副業を分けて考えるが参考になります。
- 会社員のまま業務委託で働くとき|フリーランス法で変わったこと … 副業で受けるときに確認する取引条件
- 会社を辞めずに独立の準備をする方法|副業で先に月10万円をつくる順番 … 辞める前の収入づくりと判断基準
公募で試すか、本業の延長で受けるか、受注の形が決まったら、サイト内の副業サービスの比較で、その形に合うサービスを選んでください。
この記事で参照した資料
- ランサーズ「フリーランス実態調査 2024年」(調査期間2025年1月16〜20日)
- 内閣官房「フリーランス実態調査結果」(2020年)
- プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2025」
- プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2026」(調査期間2025年11月)
- 株式会社LiKG「フリーランス実態調査」(2026年2月発表)
- 株式会社Hajimari 本業でIT案件を受けるフリーランスへの調査(2026年6月)
- Demirci・Hannane・Zhu「Who Is AI Replacing? The Impact of Generative AI on Online Freelancing Platforms」(対象期間2021年7月〜2023年7月)
- Indeedの米国求人データ(Business Insider Japan 2025年8月報道)
この記事に書いた制度や調査の内容は 2026年10月1日 に発表元の資料で確認しました。制度や数値は変わることがあるため、最新の情報は発表元で確認してください。




