テレビ番組のニュースすからも「働き方改革」との言葉が流れてきますが、「何かを変えようとしている」とは分かっても、具体的にどのようなことが行われようとしているのか分からない人も多いのでは。
そこで「働き方改革」が何を意味する言葉なのか、改めて確認してみるとしましょう。
日本の労働環境に変化が見えてきている
働き方改革とは、これまでの日本の労働環境が大きく変わろうとしている、否、変えなければならない状況を迎えてきているからこそ掲げられた政策です。
経済を語る際、常に語られるのがGDP(国内総生産)です。
あくまでも推定値ですが、日本のGDPは世界3位。長らく1位アメリカ、2位日本が定番だったものの、2010年に中国が2位に躍り出ると、以降アメリカ、中国、日本の順位に変化はありません。
単純に考えると日本は「世界3位の経済大国」になるのですが、GDPは「総生産」なので、人口が多い国が有利です。
そこで注目されているのが「国民一人当たりの値」です。
2015年に国際通貨基金から発表されたランキングの1位はルクセンブルク。以下、スイス、カタール、ノルウェー、マカオ、アメリカと続きます。
ちなみに日本は24位。GDP2位の中国は72位。
この数字から分かるのは、一人当たりの収入は多くはないけど、国民数が多いからGDPは世界3位になっている事実です。
少々穿った見方をすると、「日本は決して効率よく仕事をしている訳ではない」ということです。
残業が当たり前で、とにかく「長く働くことが良し」とされてきました。
しかし、時代が変わろうとしています。
いわば働き方改革とは、これまでとは異なり、「質より量」な労働体制から「量より質」へと変換し、生産性を高めようという政策です。労働者不足が叫ばれている以上、尚更質を求めなければならない事情もあります。
日本の経済が抱える大きな問題点
日本が抱える大きな問題点は言うまでもなく少子高齢化です。
この問題は一つの問題として考えられがちですが、少子化と高齢化は本来は切り離して考える問題です。
なぜなら、例え高齢者が増えたとしても労働人口が増えていれば問題ないのです。
しかし、日本は高齢者が増えるとともに少子化が進んでいます。言い換えれば「働けない人が増え、働ける人が減っている」のです。
どの企業も人手不足に悩まされるようになるだけではなく、人手不足が原因で廃業する中小企業も現れました。
この状況を変えるために働き方改革はぶち上げられました。
労働者不足改善のために副業を解禁
労働者不足は簡単には改善しません。
しかし、眠っている労働力もあります。
それが主婦や高齢者です。
主婦や高齢者を積極的に雇用してもらい、労働者不足解消をと考えています。
更に、副業の促進も行っています。
合理性をと考えた先に待っているのは、副業人口の増加です。
「副業元年」とささやかれているのは、ダラダラと残業をして残業代をと考えるのではなく合理的に仕事を行い短時間で終え、終わった後には副業で「労働力」として期待する。このような狙いもあります。
副業を解禁している企業も徐々にですが、増え始めています。
企業側にとっては副業を許可することによって残業代をカットすることができますし、人材不足の企業にとっては副業者で労働力をカバーできます。
同一労働・同一賃金の採用
国内の雇用情勢を考えた時、派遣、つまり「非正規労働者」が増えています。
日本は正社員を解雇しにくいので、派遣の方が企業側としてもありがたい一方、派遣社員は正規社員と比べると賃金が低いです。
そこで同一労働・同一賃金です。
派遣であれ正社員であれ、同じ仕事をしているのであれば同じ賃金にという政策は、派遣社員の低賃金化を改善したいとの現れです。
派遣社員の賃金が増えれば結婚に対して前向きになり、出生率の増加が見込めるのではないかとの期待があります。
一方、派遣社員を高めるのではなく、結局正社員側が減らされるだけなのではとの懸念もあります。
裁量労働制の推進
国会でも揉めていたこちら。
それまで日本の一般的な労働システムは、正社員であっても「時間拘束性」とも呼べるものでした。
自分の仕事が終わると、結局終わっていない人間を助けなければなりませんでしたが、その見買えありとして残業代をもらえるシステムでした。
しかし、裁量労働制は「時間」ではなく、「仕事」で拘束しようというものです。
出社時間は自由。自分のスタイルで仕事に取り組めるので、短時間で終われば仕事も終わりといういわば合理的なシステムです。
但し、こちらは仕事のジャンルや収入によって限られていますので、裁量労働制の対象は全労働のおよそ0.4%に過ぎないとされています。
一方で、経団連は裁量労働制の対象を年収400万円程度にまで引き下げたいとの意向を持っています。
まだまだ「一部の人のための制度」でしかない裁量労働制の対象が拡大されると、多くの人が合理的に働くことが求められる時代になります。残業代0法案と揶揄されているのはそのためです。
しかし、仮にですが年収400万円程度にまでこの制度の条件が下げられた場合、市場には多くの「副業希望者」が溢れるようになるのも事実です。
合理的に働ける人であれば仕事を短時間で終わらせ、さらには副業での収入も期待できるようになります。
まとめ
働き方改革は日本の未来を担うといっても過言ではない一方、まだまだ周知されていないのも事実。
長らく「長く働くことが美徳」だった国内の労働に対する価値観を変えることにもなりますので、一部から反発の声が出ているのも事実。
しかし、少子高齢化が進む中でこのまま「質より量」の働き方をしていては人口減少から国力の停滞を招くのも事実です。
日本が経済大国であり続けるための切り札、それが働き方改革なのです。