
副業から起業へ移るときの判断は、売上の大きさより「本業を辞めても続くか」で決まります。判断の材料と、手続きの順番を整理します。
この記事の目次 7項目
判断の材料は4つ
| 見るもの | 目安の立て方 |
|---|---|
| 収入の継続性 | 単発の積み重ねか、継続契約か。継続の割合が高いほど読める |
| 取引先の分散 | 1社に依存していないか。1社が止まったときに何割が消えるか |
| 固定費 | 社会保険料・住民税・年金は、辞めた後も自分で払います |
| 手元資金 | 売上が0でも生活が回る期間を、月数で数えます |
とくに見落とされやすいのが固定費です。会社員のうちは健康保険料・厚生年金保険料が労使折半で、会社が半分負担しています。辞めると国民健康保険・国民年金に切り替わり、負担の構造が変わります。
副業のまま続けるという選択肢
起業=会社を辞める、ではありません。会社員のまま個人事業主として開業届を出すこともできます。副業を事業所得として申告し、青色申告を選ぶという形です。
| 会社員+個人事業主 | 会社を辞めて専業 | |
|---|---|---|
| 社会保険 | 勤務先の健康保険・厚生年金(労使折半) | 国民健康保険・国民年金(全額自己負担) |
| 収入の安定 | 給与が土台にある | 売上に完全に依存 |
| 使える時間 | 限られる | 増える |
| 損益通算 | 事業所得なら給与所得と通算できる | 給与所得がないため通算の相手がない |
手続きの順番

会社員のまま個人事業主になる場合
- 就業規則を確認する。副業・兼業の条項と、届出の要否を確認します
- 開業届を出す。事業の開始から1か月以内に、所轄の税務署へ提出します
- 青色申告承認申請書を出す。期限は原則として事業開始から2か月以内、または適用を受けたい年の3月15日まで。期限を過ぎると翌年からになります
- 帳簿をつける。青色申告特別控除65万円を受けるには、複式簿記での記帳と、e-Taxまたは電子帳簿保存が必要です
事業所得と認められるかは帳簿次第
開業届を出せば自動的に事業所得になるわけではありません。2022年10月の通達改正以降、帳簿書類を保存しているかどうかが判定の目安になっています。保存があれば概ね事業所得、なければ概ね業務に係る雑所得です。ただし収入が僅少な場合(例年300万円以下で主たる収入の10%未満)や、例年赤字で改善の取組がない場合は個別に判断されます。
インボイスをどうするか
取引先が課税事業者で、消費税の仕入税額控除を受けたい場合、インボイスの発行を求められることがあります。登録すると免税事業者ではなくなり、消費税の申告義務が生じます。
| 制度 | 2026年8月時点の状況 |
|---|---|
| 2割特例 | インボイス登録により課税事業者になった人の負担を軽減する措置。個人事業者は令和8年分(2026年分)が最後 |
| 3割特例 | 令和8年度改正で新設。個人事業者限定で令和9年分・令和10年分が対象。基準期間の課税売上高1,000万円以下が要件 |
| 少額特例 | 税込1万円未満の課税仕入れは帳簿の保存のみで仕入税額控除可。令和11年9月30日まで |
| 免税事業者からの仕入れの経過措置 | 控除割合は令和8年10月から7割、令和10年10月から5割、令和12年10月から3割、令和13年9月末で終了 |
登録するかどうかは、取引先の性質で決まります。取引先が一般消費者中心ならインボイスを求められる場面は少なく、事業者向けなら求められる可能性が高くなります。判断に迷う場合は税務署または税理士に相談してください。
副業としてのメリット・デメリット
| メリット | デメリット・注意したい点 |
|---|---|
|
|
事業として広げやすいサービス
- ココナラ … 自分のスキルを商品として出品する
- BASE … 無料でネットショップを開設する
- くらしのマーケット … 手軽に出店できる暮らしのサービス
- クラウドワークス … 継続契約につながる案件を探せる
- スピードM&A … 育てた事業を売却する選択肢
次に読むなら
- 副業の確定申告はいくらから? … 20万円ルールと住民税の関係
- 会社員のまま業務委託で働くとき … フリーランス法で変わったこと
- 副業はキャリアにどう効くか … 転職の入口になっている実際の数字
この記事で参照した資料
- 国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書」/「所得税の青色申告承認申請手続」
- 国税庁 令和4年10月7日付 所得税基本通達35-2の改正およびその解説
- 国税庁「令和8年度税制改正特集」(インボイス制度の経過措置)/「2割特例」「少額特例」の概要
- 所得税法69条・70条
この記事に書いた税の取扱いは 2026年8月22日 に、国税庁・厚生労働省・総務省など発表元の資料で確認しました。制度は改正されることがあるため、手続きの前に必ず最新の内容をご確認ください。




