
新しい薬の開発に協力し、通院や入院にかかる負担の補填として「負担軽減費」を受け取る仕組みです。労働の対価ではなく、制度上はボランティア活動として位置づけられています。
「報酬」ではなく「負担軽減費」です
支払われるお金は、働いた対価ではありません。厚生省(当時)の検討会報告書は、治験への参加を「創薬(そうやく)ボランティア」と位置づけ、次のように書いています。
「基本的に被験者が治験に参加することは、被験者の善意という要素によるものではあるが、治験参加により生じる被験者の負担につき、実際にかかった費用を勘案しつつ、治験審査委員会の承認を得た上で、社会的常識の範囲内において適切な金銭等の支払いが考慮されることが適当である。」
この記事では、制度のしくみと、参加する前に確認しておくことをまとめます。
サービス基本情報(2026年8月21日 確認)
| 何をするか | 新しい薬の候補について、人での効果と安全性を確かめる試験(治験)に、被験者として参加します。健康な人が対象になるのは主に第I相試験で、ここでは薬の安全性と適切な投与量を調べます。 |
|---|---|
| お金の性格 | 負担軽減費。 通院・入院にかかる時間的な拘束や交通費などの負担を補填するもので、労働の対価ではありません。 |
| 金額 | 公的に確認できる水準は、外来で1回の来院あたり3,000円〜10,000円(平均約7,000円)です。ただしこれは1999年(平成11年)の厚生省の調査値で、国が現在の相場を公表したものではありません。実施医療機関が公開している説明文書の例にも「治験のための来院1回につき7,000円をお支払いしています」という記載があります。 |
| 支払い方 | 参加期間などによって按分されます。 国のガイダンスは「被験者が治験を完遂しなければ支払いが全くなされないような方法は不適当である」としています。 |
| 参加の決め方 | 文書による説明と、文書による同意(インフォームド・コンセント)が必須です。説明文書には、予測される不利益、健康被害が起きたときの補償、いつでもやめられることなどが記載されます。 |
| やめたいとき | いつでも撤回できます。 国のガイダンスは「被験者又はその代諾者は、被験者の治験への参加を随時拒否又は撤回することができること。また、拒否・撤回によって被験者が不利な扱いを受けたり、治験に参加しない場合に受けるべき利益を失うことはないこと」と定めています。 |
| 審査 | 治験審査委員会(IRB)が、計画の倫理性・科学性、被験者の募集手順(広告を含む)、金銭の支払額と支払方法を審査します。委員会には医療を専門としない者と、病院と利害関係のない者が必ず参加します。 |
| 健康被害の補償 | あります。 GCP省令第14条は「治験の依頼をしようとする者は、あらかじめ、治験に係る被験者に生じた健康被害…の補償のために、保険契約の締結その他の必要な措置を講じておかなければならない」と定めています。過失の有無を問わず補償され、因果関係の証明で被験者に負担を課さないことも国のガイダンスに明記されています。 |
この記事の目次 6項目
副業としてのメリット・デメリット
| メリット | デメリット・注意したい点 |
|---|---|
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治験の「相」と、健康な人が参加するのはどこか
| 相 | 対象 | 何を調べるか |
|---|---|---|
| 第I相 | 同意を得た健康な希望者 | 安全性と適切な投与量 |
| 第II相 | 同意を得た少数の患者 | 使用量・使用法・効果 |
| 第III相 | 同意を得た多数の患者 | 有効性(標準治療との比較) |
健康成人を対象とする試験として第I相がありますが、対象者や試験の目的は個別に異なります。厚生労働省が「くすりの候補の開発の最終段階では、健康な人や患者さんの協力によって、人での効果と安全性を調べることが必要です」と説明する「最終段階」は、動物実験までを終えて人で試す段階に入った、という開発工程上の位置づけを指す言葉です。安全性が確認済みという意味ではありません。むしろ第I相は、人に投与する最初の段階です。
参加を決めるまでの流れ
- 募集情報を見て申し込む
- 説明を受ける(文書による説明が義務です)。わからないことは納得するまで質問できます。その場で決めず、説明文書を持ち帰って家族に相談してから決めることもできます
- 同意する場合は文書に署名する
- スクリーニング検査を受ける(ここで条件に合わないと参加できません)
- 治験に参加する(通院型または入院型)
- 負担軽減費が支払われる
参加中に、参加を続けるかどうかの判断に影響する新しい情報が出た場合、治験を担当する医師はその情報を直ちに伝え、継続するかどうかを改めて確認する義務があります(GCP省令第54条)。
説明文書に必ず書かれていること
GCP省令第51条は、説明文書に記載すべき事項を17項目定めています。次の項目が書かれているかを、その場で確認してください。
- 予測される不利益(利益が見込まれない場合はその旨も)
- 治験に参加する期間
- いつでも取りやめることができる旨
- 参加しないこと・取りやめることで不利益な扱いを受けない旨
- 健康被害が発生した場合の連絡先と、必要な治療が行われる旨
- 健康被害の補償に関する事項
- 金銭等が支払われる場合はその内容(支払額の算定の取決めを含む)
- 被験者が守るべき事項
なお同条第2項は、説明文書に「被験者となるべき者に権利を放棄させる旨又はそれを疑わせる記載」や、依頼者・医師の「責任を免除し、若しくは軽減させる旨又はそれを疑わせる記載」をしてはならないと定めています。そうした記載があれば、その時点でおかしいということです。
募集広告のルール
治験の被験者を募集する広告は、治験審査委員会(IRB)の事前承認が必要です(GCP省令第32条第1項第2号)。委員会は支払額と支払方法も審査し、それらが「被験者に治験への参加を強制したり、不当な影響を及ぼさないこと」を確認すると国のガイダンスに定められています。
また業界団体の基準では、次のような表現が禁止または「避けるべき表現」とされています。
- 「高額治験」「高額報酬」
- 「治験バイト」「治験アルバイト」
- 金銭の支払いによって誘引するような表現
- 治験の参加が高額アルバイトと認識されるような表現
- 「すでに海外で使われている、安全なお薬です」のように安全であると暗示させる表現
- 金額だけを大きな文字・太字・色違いで目立たせること
これらの表現を使っている募集を見かけたら、そのこと自体が判断材料になります。
申し込む前に確認しておきたいこと
- 説明文書を持ち帰って読む。その場で決める必要はありません。厚生労働省も「説明文書を持ち帰って家族に相談してから決めることもできます」と案内しています。
- 予測される不利益の欄を、必ず自分で読む。説明文書に記載が義務づけられている項目です。
- 健康被害の補償の内容を確認する。補償は制度上義務ですが、内容は説明文書に書かれています。
- 体調に変化があったら、必ず、すぐに伝える。「言うと負担軽減費が減るのではないか」と考えて黙ってしまうことを、国のガイダンスが名指しで懸念しています。安全と人権の確保が最優先です。
- 飲んでいる薬・サプリメント・市販薬をすべて申告する。市販の風邪薬や漢方薬も対象です。他の病院を受診するときも事前に相談してください。
- お金を目的に、短い間隔で何件も参加しようとしない。治験ごとに他の治験からの間隔が除外基準として定められています。
- 税務上の扱いと、勤務先の副業規定については、公的な見解が確認できませんでした。当サイトは税務の判断ができません。税務署または税理士、および勤務先の就業規則で確認してください。
確認に使用した公的資料:
厚生労働省「治験について(一般の方へ)」 /
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令・e-Gov) /
GCP省令ガイダンス(PMDA) /
「治験を円滑に推進するための検討会」報告書(平成11年6月15日)
※当サイトは特定の治験や募集事業者への送客を目的としていません。上記は制度の内容を確認するために参照した公的資料です。
今回の確認範囲と訂正履歴
2026年9月7日:健康成人の参加対象を第I相だけに限定して読める説明を修正。他の制度説明・原典リンクは保持しました。
確認方法は公開資料の照合と計算の確認です。利用体験・取材・案件別原票の検算、医師・税理士等による個別判断を行ったという意味ではありません。
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